建設業の経理 No77
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建設イノベーション探訪08固定観念にとらわれない企業像をめざして株式会社小坂田建設◉所在地:岡山県岡山市◉創立:昭和30年(1955年)1月◉従業員:9名◉売上高(平成28年7月期実績):1億4,200万円インタビュアー:大久保彩音小坂田建設のある建部町までは,岡山駅からディーゼル車に揺られ約一時間。駅での「すれ違い待ち」がある,ノスタルジックな路線である。建部町は,岡山県のちょうど真ん中に位置する。平成19年に岡山市と合併し,市全体の1割超の面積を有するが,人口は1%以下の6,000人,世帯数も2,300戸ほど。高齢化率は40.7%で,過疎と高齢化が進む町だが,学校帰りの高校生で占められた車内に,そんな空気は微塵も感じられない。今回お話を伺った3代目の小坂田英明社長は43歳。町の中心とも言うべき大変エネルギッシュな人物である。本年創業61年目を迎える小坂田建設の直前期の売上げは1億4,200万円。社員9人役員3人の12人体制で,平均年齢は44歳。平均残業時間は月3時間を下回り,有給休暇の取得率は70%超え,育児・介護休暇の取得率はほぼ100%。定年退職以外の退職はなく,ここ8年間の離職率は0%という驚異の職場環境である。「地域の笑顔創造カンパニー」として,地域・行政・社員皆が笑顔になることを目標にしている同社。しかし,前期までの7期は連続で経常黒字を維持しているが,平成20年度末には倒産を考えるほどの経営状況であった。「倒産寸前」からの奮起小坂田建設は,7年前から公共事業以外の様々な仕事に取り組み始めた。建設工事に限らず,家周りのことは何でも引き受ける。ピーク時の平成10年には4億円の売上げがあったが,その後はダンピング入札の影響なども受け,20年には売上げは1億1,000万円まで下がり,一気に倒産寸前となってしまった。17年には特定建設業を維持するための粉飾決算まで行っている。「一般的には3年赤字でも厳しいのに,実際は9期連続赤字ですから,まあ,普通は潰れる会社ですよね。私は13年の10月に岡山に戻ってきたので,数字が改ざんされていることは立て直し段階で知りました。現場は一生懸命やって利益は残っているはずなのに,何でこんなことになっているのか,と。」当時は資金繰り表はなかったと言う。日々のお金の出入りの管理もしていなかった。決算書も読めず,現場が終わってみないと,儲かっているのかいないのかすらわからない。そうして,20年12月末にいよいよ資金繰りが悪化した。「中小企業診断士に来てもらいましたが,数字が非常に悪くてどうにもならないから,経営支援団体に相談するように言われました。結局政府の緊急保証制度融資を使って,銀行から2,700万円貸してもらったのですが,16建設業の経理Winter2017

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