建設業の経理 №74
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部長:社長,X町のアパート建設の件で,予定価格が700万円の土工事をA社に下請けに出すので,A社に見積書を作ってもらう予定なのですが,見積書の提出まで10日以上の期間を与えればいいんですよね。社長:そうだね。そのように法律で決まっていたはずだよ。部長:でも,まだ細かい施工条件が決まってないので,見積条件を示せないのですが,それでも大丈夫でしょうか。社長:…。▲はじめに横浜市の分譲マンションが傾いた問題で,関係各社に行政処分が下されました。この事案での一番の問題は,杭打ちデータを改ざんしたことにありますが,こうしたデータ改ざんが行われた背景としては,関係各社のコンプライアンスの意識が低く,下請業者への丸投げや主任技術者の不在など,建設業法違反が漫然と行われていたことが挙げられます。そこで今回は,建設業法のうち,元請業者と下請業者との間で問題となりやすいポイントを確認してみたいと思います。1▲見積条件の提示⑴建設業者は,建設工事の注文者から請求があれば,請負契約が成立するまでの間に,見積書を注文者に交付しなければなりません(建設業法第20条第2項)。そして,注文者は,随意契約であれば契約締結前に,競争入札方式であれば入札前に,それぞれ13の事項*1について,できる限り具体的な内容を示し,かつ,建設業者が見積りをするための一定の期間*2を与えなければいけません(同第20条第3項)。工事費の内訳の明確な見積りを行わせることは,注文書に請負代金の適正性の判断を可能にさせるだけではなく,ダンピング等の防止にもなり,下請業者の保護も図られます。⑵通常,注文者である元請業者は,下請業者に見積りを依頼しますが,施工条件の一部が決まらない段階で見積りが必要となることはよくある話です。この場合には,元請業者は,具体的な内容が確定していないことを説明する必要があります。何も正当な理由がな法務全社で学ぼう!知っておきたい法律知識⑪忘れていませんか?建設業法のルール銀座中央総合法律事務所弁護士坂井雄介Spring2016建設業の経理61

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