〈入門〉建設業会計の基礎知識
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I建設業会計における経営分析の基本経営分析において、個別の経営指標は一定の有用な情報を提供しますが、企業全体として良いのか悪いのかは判断できません。企業全体の評価という観点からは、何らかの形で統合化された総合評価が必要になってきます。総合評価には二つの目的があり、一つは自社の経営政策、経営戦略、経営管理に役立てるための内部分析と、もう一つは投資家や債権者等の保護の観点から企業のランキング(格付け)を行うための外部分析があります。1.経営分析の実践⑴貸借対照表・資産の部を見てみましょう経営分析では、資産の部の流動資産は現金預金、受取手形、完成工事未収入金、有価証券を当座資産といい、販売、製造等の過程を経ないで資金化される科目群です。すなわち、流動負債との兼ね合いで、当座資産は短期の支払財源となるものです。なお、受取手形や完成工事未収入金について、相手方の支払不能等を考慮して、貸倒引当金(回収不能見積額)を設定する場合がありますが、その金額を控除して分析する必要があります。未成工事支出金や材料貯蔵品(現場に搬入される前の物品)は棚卸資産といい、工事の完成引渡しを経て(商業では販売を経て)資金化されます。特に、建設業では未成工事支出金が多額になることが多く、経営分析ではその点を意識して分析する必要があります。続いて、固定資産ですが、固定資産は有形固定資産(建物、運搬具、土地等)、無形固定資産(特許権等)、投資その他の資産に分かれます。有形固定資産の中の建設重機械はリース取引の普及により、この種の比率は低下しています。そのため建設業は製造業に比較して一般的に固定資産が少ないといわれています。このことは後述する経営分析(生産性分析)に影響が出てきます。第4部さあ、実践!建設業会計の展開と応用130

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