実践 建築の企画営業
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 「とにかく建物を建てればよい、設計すればよい」という時代から、「何を設計し、何を建築すればよいのか、それを建てることによりどのようなメリットをもたらせるのか、収支は成り立つのか」といった、設計以前の「企画段階」が重要視される時代になっているのです。 「情報力」や「技術力」とは異なり、「企画力」は企業の規模による限界なしに培うことができます。「情報力」を2倍にするのは難しくとも、「企画力」を2倍にすることは可能なのではないでしょうか。ここで、皆さんは「ランチェスターの法則」というものをご存じでしょうか。潜水艦2隻というわずかな戦力の差が、戦果に二乗比例の大差をもたらすというものです。この法則は、商売における戦力にも通じていて、デパートの売り場面積が2倍になれば、売上げは4倍になると言われています。「企画力」を2倍にすることで、同じ規模の他社と比べて4倍の格差を生じさせることが可能になるのです。実態の裏付けを持った不動産が情報化される時代―― 本書の初版が発刊された1989年当時は、「企画営業」という言葉がようやく建設業界で使われ始める時代でした。当時でも広告業界などソフトを扱う業界では当たり前のように使われていましたが、建築・不動産業界などハードを扱う業界ではなじみが薄かったのです。 あれから25年以上が経過した現在、「企画営業」はどの業界でも必須のキーワードとなり、とりわけIT業界では、情報営業と言わんばかりの営業戦略で、あらゆる業界を制しているといっても過言ではありません。 土地として物理的に実在する不動産でさえ、証券化した紙情報に置き換えられ、株と同じ一つの金融商品として投資対象になる時代です。金融商品として扱われるようになると、その不動産の利用実態の情報が重要になります。テナントが埋まればよいだけでなく、どんなテナントが入っているのかも重要な要素になってくるのです。建物にしても、物理的に建物があればよいのではなく、どのような性能を持った建物なのかが重要な要素になるのです。

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