未分割申告の税実務
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1はしがき 平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられた影響で相続税申告の案件が増加し、相続実務を担当する専門家においても相続税申告、相続相談等の依頼が増えてきているかと思います。また、核家族化、兄弟姉妹の関係性の希薄化等の影響で相続争いになる件数も増加傾向にあります。 遺産分割調停・審判の件数は30年前の2.5倍程度に増えており、家庭裁判所の新受件数としても年間1万5,000件を超えています。この数値はあくまで家庭裁判所にて調停・審判に発展した件数であり、調停・審判に発展しない遺産分割争いの件数は「その10倍はある」と実務ベースではいわれております。現実に家庭裁判所への遺産分割関係の相談件数は毎年20万件に上っているという状況にあります。 相続実務において遺産分割不調、相続人間の争い等のトラブルに接する機会も増え、下記のような判断に迷う場面に出くわすことも多々あるかと思います。● 遺言書があっても未分割申告は可能なのか?● 生前贈与やみなし相続財産がある場合の未分割申告の計算方法は?● 数次相続案件で配偶者の税額軽減を適用しない方が有利になるケースとは?● どのようなケースであれば期限後申告や更正の請求でも小規模宅地等の特例が使えるのか?● 遺留分減殺請求がされている場合の不動産所得の帰属はどうなるのか?● 未分割の場合の消費税の納税義務の判定はどう計算するのか? 未分割申告が必要となるような相続争いの税実務は通常の争いのない案件に比較しイレギュラーな取り扱いの論点も多く、手続きを一つ間違えただけで取り返しのつかないことにもなりかねません。本書では、このような相続争いに

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