都市農地の特例活用と相続対策
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第1章 生産緑地2022年問題とその対応策2 平成4年に三大都市圏の特定市における生産緑地の指定が開始され、26年以上が経過しました。平成4年に指定された生産緑地は、平成34年(2022年)になると、つまり、あと3年余りで生産緑地の買取り申出が可能になります。この生産緑地の所有者が一斉に自治体に買取り申出を行うと、その大半が宅地として市場に放出され、宅地化が急速に進むことや、転用された土地に隣接する農地の営農継続に支障が出ることなどが懸念されるというのが、都市農地の2022年問題です。1 2022年に生産緑地は一斉に買取りの申出? 平成4年に三大都市圏の特定市において指定された生産緑地は、主たる従事者に「死亡」又は「故障」が生じなければ、平成34年(2022年)以後にならないと買取りの申出をすることができず、結果的に自由に譲渡や有効活用などをすることができません。逆に、今の法律のままですと、平成34年(2022年)以後、三大都市圏の特定市の生産緑地について一斉に買取りの申出がされ、都市農地が急速に宅地化する可能性がありました。2 東京オリンピック終了後、都市部で大量に宅地が供給されると地価下落? 2020年の東京オリンピック開催やインバウンドによる外国人観光客の大幅増加により都心部の地価が高騰していますが、東京オリンピック開催直前ごろから地価が下落する可能性が指摘されています。万一そうなれば、その2年後の2022年には生産緑地の買取りの申出が自由にできるようになり、結果として都心部に宅地が大量に供給されることになります。 そうならないようにするため、次のような法改正が行われました。3 都市農地は宅地化すべきものから都市にあるべきものに 平成27年4月16日に「都市農業振興基本法」が成立し、都市農業の振興に関する基本理念として、①都市農業の多様な機能の適切かつ十分な発揮と都市農地の有効な活用及び適正な保全が図られるべきこと、②良好な市街地形成における農との共存が図られるべきこと、③国民の理解の下に施策が推進されるべきことが明らかにされました。 これにより必要な法制上、財政上、税制上、金融上の措置を講じるよう求められ、平成28年5月13日に「都市農業振興基本計画」が閣議決定されました。都市農業振興基本計画では、都市農地は、これまでの「宅地化すべきもの」から都市に「あるべきもの」へと明確に変更されました。そして、平成29年4月28日に「都市緑地法等の一部を改正する法律」が成立しました。さらに、平成30年度税制改正により、税制面の整備が行われるとともに、平成30年6月20日に「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が成立しました。これらの政策が2022年の生産緑地の一斉買取り申出に備えたものであることは明らかでしょう。1-1 生産緑地2022年問題とは

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