譲渡所得課税をめぐる費用認定と税務判断
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はじめに譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他の契約により他人に土地を長期間使用させる行為で一定の条件に該当するものを含みます。)による所得をいいます。譲渡所得は、毎年発生する不動産所得や事業所得などと異なり、臨時かつ偶発的に発生する所得であるため、一般になじみが薄く、また、特例制度も数多く設けられています。所得税法では、譲渡所得の金額について「総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除」し、さらに譲渡所得特別控除額を控除して計算すると定めています(所法33③)。このうち取得費については、「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」との定義規定(所法38①)がありますが、譲渡費用については所得税法上特段の規定が置かれていません。また、取得費に付随費用が含まれることは判例上確立されているものの、具体的な例示が示されているだけで、その判断基準や範囲などは確立されていない状況にあります。具体的には、土地や建物・株式などを購入する時にはいわゆる購入代金などの「取得費」や仲介手数料などの「譲渡費用」がかかります。このような費用は、譲渡所得の計算の際に、譲渡収入から差し引かれるもので、これらを漏れなく計上することが節税にもつながります。国税庁の法定資料監査事績によれば、例年非違割合が高い不動産の対価を支払った法人及び不動産業者である個人(仲介を主な事業目的とする者などは除かれます。)が提出する「不動産等の譲受けの対価の支払調書」について監査(4,315件)を実施したところ、今年も83.5%に当たる3,603件から

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