譲渡所得課税をめぐる費用認定と税務判断
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第3章 ケーススタディ306用して算定することも可能です(平成12年11月16日裁決(裁決事例集No.60 208頁)(注2))。① 建物 ‌ 一般財団法人建設物価調査会が発行している建築統計年報で確認して着工建築物構造別単価を基に算定し、その価額から譲渡時までの減価償却費相当額を控除することにより算定します。② 土地 ‌ 一般社団法人日本不動産研究所が調査し公表している市街地価格指数を基に、その価格指数の譲渡時に対する取得時のその価格指数の割合を乗じて価額を推定します。(注2) この裁決は、個人が土地・建物を同時に譲渡した場合において、契約書等で土地と建物の取得価額が明らかになる資料がないため、預金から出金した金額を基に取得費を計算しているのですが、購入時の建物の金額をゼロとして出金金額のすべてを土地の取得価額としたところ、更正処分を受けたので、審査請求をした事案です。   この裁決では、原処分庁は、   「本件物件の取得費については、請求人からその取得に要した費用を明確にする資料の提出はなく、また、原処分の調査(以下「本件調査」という。)によっても実際に要した費用を明らかにできなかったことから、合理的な算定方法によらざるを得ない。   ところで、土地と建物を一括して譲渡し、そのいずれも不明である場合の土地・建物の取得費を算定する方法として、  ①‌ 租税特別措置法第31条の4《長期譲渡所得の概算取得費控除》を適用する方法  ②‌ 土地の取得価額は土地の取得時の売買実例から算定し、建物の取得価額は譲渡価額の総額から土地の譲渡時の売買実例価格を差し引いて算出された建物の譲渡価額から減価償却費を控除する方法  ③‌ 土地と建物の固定資産税評価額を基に算定する方法

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