相続道の歩き方
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111の中でも認知(民781Ⅱ)、推定相続人の廃除およびその取消し(民893、894Ⅱ)は、遺言執行者だけが執行できるものとされています。ですから、これらの場合には遺言執行者がいなければならないということになりますね。たとえば、ある者を被相続人の子として認知することが遺言の内容となっている場合でも、それだけで自動的に認知の効果が生じるわけではなく、認知届の提出(戸籍法64、60、61)等の手続が必要となります。また、ある相続人を廃除すると書かれていても、それだけで相続関係から排斥されるわけではなく、家庭裁判所による廃除の審判(家事事件手続法188Ⅰ)や戸籍法に基づく届出が必要になります。これらの場合には必ず遺言執行者が必要だということです。こういったデリケートなことは、他人任せにせず遺言を残した本人がしておいてくれたらよかったわけですが、わざわざ自分が死ぬタイミングまで遅らせていたというのは、自分ではできない理由があったということなのでしょう。本人がもういないので、誰がするかというと遺言執行者が、となるわけです。 どちらかというといたほうがいいとき一方、執行行為は必要だけれども、必ずしも遺言執行者によらなくてもよいというものがあり、これには遺贈(民964)、遺産分割方法の指定(民908)などがあります。実務的にはそれほど多くはありませんが、財団法人設立(一般社団及び一般財団法人法に関する法律152Ⅱ)のための寄附行為や信託の設定(信託法3②)なんかもこれにあたります。これらはいずれも、相続人によっても遺言内容の実現は可能なのですが、それが期待しがたい場合もあり、そういったケースでは遺言執行者に遺言執行をしてもらう実益がある、ということになります。寄附行為や信託の設定は、自分たちでやってみようという気骨のある相続人も少ないでしょうから、遺言執行の際には専門家が選任されたり、第3章相続開始後の道[遺言相続編]

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