租税回避をめぐる税務リスク対策
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78第2編 「不当性要件」についての実務的な観点からの検討1ヤフー事件最高裁判決が理解する事件の構図ヤフー事件最高裁判決は、ヤフー事件において問題となった組織再編成について、ソフトバンクによる平成20年11月の本件提案において提案された手順を基礎として、ヤフーが、ソフトバンクからIDCSの発行済株式全部を譲り受けてIDCSを完全子会社とした上で、その約1か月後にIDCSを法人税法2条12号の8イの適格合併として吸収合併すること(本件合併)により、法人税法57条2項に基いてIDCSの利益だけでは容易に償却し得ない約543億円もの未処理欠損金額をヤフーの欠損金額とみなし、これをヤフーの損金に算入することによりその全額を活用することを意図して、同21年3月30日までのごく短期間に計画的に実行されたものというべきとしている。そして、IDCSの未処理欠損金額をヤフーの欠損金額として引き継ぐためには、法人税法施行令112条7項5号の特定役員引継要件を満たすことによってみなし共同事業要件を満たす必要があり、本件副社長就任は、法人税の負担を減少させことを目的として、特定役員引継要件を満たすことを意図して行われたものであることは明らかとした。すなわち、最高裁は、ヤフー事件は、そのままでは償却が不可能となるIDCSの未処理欠損金額を活用することによってヤフーの法人税の負担を減少させることを目的として組織再編成に係る行為が計画され、その計画の一環として本件副社長就任が行われたものと認定しているのである。2IDCF事件最高裁判決が理解する事件の構図IDCF事件最高裁判決は、IDCF事件において問題となった組織再編成にかかる一連の行為である本件分割、IDCF株式譲渡、IDCS株式譲渡および本件合併について、ソフトバンクによる平成20年11月の本件提案における手順を基礎として、ソフトバンクの完全子会社であるIDCSの未処理欠損金額のうち平成22年3月期以降は損金に算入することができなくなる約124

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