租税回避をめぐる税務リスク対策
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79第1章 ヤフー・IDCF事件最高裁判決が理解する事件の構図億円を余すところなく活用するため、IDCSに本件分割を行わせることにより、償却することができない未処理欠損金額約100億円に相当する譲渡益を発生させ、これにより上記未処理欠損金額のうち約100億円を償却し、他方でIDCFに法人税法62条の8・1項に基づく上記譲渡益相当額と同額の資産調整勘定の金額を発生させることにより、上記未処理欠損金額のうち上記約100億円をIDCFの資産調整勘定の金額に転化させ、IDCFにおいてこれを以後60か月にわたり償却し得るものとするため、平成21年3月30日までのごく短期間に計画的に実行されたものであるとしている。そして、IDCSに約100億円の譲渡益を発生させ、IDCFに同額の資産調整勘定の金額を発生させるためには、本件分割が当事者に譲渡損益を生じさせる非適格分割である必要があったことから、本件分割をあえて非適格分割とするために、本件分割とIDCS株式譲渡の間にIDCF株式譲渡を行う計画が立てられ、その計画どおり実行されたものとみることができるとした。すなわち、最高裁は、IDCF事件は、IDCSの未処理欠損金額のうち、平成22年3月期以降は損金に算入することができなくなる約124億円を余すことなく活用することによってIDCFの法人税の負担を減少させるために、組織再編成に係る行為が計画され、その計画に基づいて本件分割、IDCF株式譲渡、IDCS株式譲渡および本件合併が実行されたものと認定しているのである。3税負担軽減目的の組織再編成このように、最高裁は、ヤフー事件およびIDCF事件は、そのままでは損金に算入して活用することが困難であったIDCSの未処理欠損金額を、ヤフーの欠損金として引継ぎ、また、IDCFの資産調整勘定の金額に転化させることによって、余すことなく活用することでヤフーおよびIDCFの法人税の負担を減少させることを目的として、本件副社長就任が実施され、また、本件分割が非適格分割に該当するような手順を用いて一連の組

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