『営業経費』の税務判断
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(2)必要経費に対する2つの考え方事業所得の金額の計算上、上記「所得を生ずべき業務について生じた費用」として認められるか否かについて、課税庁と納税者の考え方の違いが鮮明になった事件(東京地裁平成23年8月9日判決、その控訴審である東京高裁平成24年9月19日判決(下記の「裁判事例」参照))から、その解釈の違いについてみていきましょう。まず、上記東京地裁及び東京高裁が示した判断をもとに、「所得を生ずべき業務について生じた費用」として認められるか否かの判断について、双方の考え方の違いを結論だけ対比してみましょう。事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であるか否かで判断納税者の考え・東京高裁の判断所得を生ずべき事業の業務と直接関係し、かつ、専ら業務の遂行上必要といえるか否かによって判断課税庁の考え・東京地裁の判断裁判所は、第一審東京地裁では課税庁の考え方を、控訴審の東京高裁では納税者の考え方を採用し、最高裁は課税庁から申立てがあった上告受理申立てを却下したことから、結果として納税者の考え方を採用したことになります。(3)今後の対応しかし、このような納税者の考え方が、今後、他の場合でも同様に通用するかというと、そうではないようです。実際、上記判決以後に判断されている裁決(例えば、後掲する「平成26年3月6日裁決」(Q3の「裁決事例」参照))等においても、課税庁はこれまでの解釈を変えているとは思えません。また、裁判所が示した判断については、「弁護士会等の目的やその活動実績、強制加入団体である弁護士会等と弁護士の関係、弁護士会等の活動費用の実態を考慮して、弁護士が弁護士会等の役員等としての活動に要し事業所得に係る必要経費の基本的な考え方55

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