税務調査事例からみる役員給与実務Q&A
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203第2章役員給与を巡る法人税の理論と実務(3)「不相当に高額な部分の金額」の意義と判定基準 次に、法人税法上、特殊関係使用人に対する給与の支給額のうち損金に算入されない「不相当に高額な部分の金額」とは、具体的にはどのような金額を指すのであろうか。これは以下のように、基本的に、過大役員給与の損金不算入の規定の「実質基準」と同様の基準で判断することとなる(法令72の2)。① その使用人の職務内容② その法人の収益及び他の使用人の給与の支給状況③ その法人と同種の事業を営む事業規模が類似する法人の使用人に対する給与の支給状況 上記①~③といった状況等に照らし、その使用人の職務対価として相当であると認められる金額を超える部分は、損金に算入されないのである。(4)本件への適用 本件の場合、入社間もない使用人への給与として、役員並みの水準の金額を支給するのは、上記(3)の①~③のいずれに照らしても過大であると認定される可能性が高いといえる。すなわち、経験の浅い使用人に役員並みの給与が支給されるのは、当該使用人がひとえに代表取締役の長女であるからと考えられ、まさにそのような恣意的な給与の支給がなされるケースを規制するため、過大な使用人給与の損金不算入の規定が存在するわけである。仮に当該使用人への給与が過大とされた場合、通常、同じレベルの他の使用人と同等の給与を上回る部分の金額が損金不算入となる。 ただし、役員給与の場合と同様に、実質基準の適用については税務調査で課税庁と意見を異にするケースが珍しくないことから、念のため税務の専門家である税理士とも相談されることをお勧めする。

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