税務調査事例からみる役員給与実務Q&A
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245第3章役員退職給与を巡る法人税の理論と実務 会長を退任し非常勤の取締役相談役となったA氏は、事実上役員(取締役)を退任したのと同等の状況であると考えられることから、A氏に対し支給する役員退職慰労金は、法人税法上、役員退職給与として損金算入されるものと考えられます。解 説(1)役員の任期と退職 退職給与は、原則として支給対象者の退職という事実が生じない限り損金に算入されない。 役員(取締役)の任期は通常2年間であり(会法332①)、任期満了により終任となる。しかし、任期満了に伴い再び選任(再任)された場合には退職したとはいえず、税務上も再任された場合には退職があったものと取り扱っていないところである。平取締役が常務・専務等に昇格・分掌変更された場合についても同様である。(2)分掌変更等の場合の退職給与の特例 しかし、取締役としての地位を有し、勤務が継続するとはいっても、常勤から非常勤の取締役になる場合には、多くのケースで経営の実権を握っておらず、実質的に「引退状態」といえることから、退職したのと同視するのが実情に即していると考えられる。 そのため通達では、以下に掲げるようなケースに関し、役員の分掌変更または改選による再任等に際して退職給与として支給した給与については、その役員としての地位または職務が激変し、実質的に退職したのと同様の事情があると認められるので、当該給与を退職給与として取り扱うものとされている(法基通9-2-32)。

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