民事・税務上の「時効」解釈と実務
13/38

2.民事上の時効の効果と要件(1)民事上の時効の効果民事上の時効の効果は、一度発生すると「その起算日にさかのぼ」(民法144条)って生じることになります(課税判断への影響は、第3章以下を参照)。つまり、消滅時効であれば、時効期間の起算日から債権は存在していなかったことになりますし、取得時効であれば、時効期間の起算日から対象財産について所有などをしていたことになるということです。時効の効果が生じたにも関わらず、その効果を起算日に遡って認めないとすると、売掛債権の遅延損害金、利息などや不動産を利用していた間の利用料相当額の不当利得返還請求などの権利が残ってしまうことになります。それでは、時効制度の趣旨である永続した事実状態の安定をもたらすことはできませんので、そのようにされているのです。「起算日」は、次の(2)以降で示す通り、「起算点」(「権利を行使することができる時」や「権利を行使ができると知った時」)により定まることになります。ただし、時効期間の計算については、別途民法による期間計算のルールに従うことになることから、起算日と期間計算の開始の日(期間の始期)とは区別して考える必要(24ページQuestion1参照)がありますので、注意が必要です。32.民事上の時効の効果と要件

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る