民事・税務上の「時効」解釈と実務
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に解されているようです)。それでは、債権放棄(債務免除)の場合と同様に、消滅時効による債権の消滅の場合においても、寄附金とされる可能性があるのかという問題があります。債権者が個人、債務者が個人のケースで、消滅時効の援用があった際に、債務者の一時所得の収入金額となるのか、それともみなし贈与として贈与税の対象になるのかと同様の問題意識(164ページQuestion25参照)です。法人税法37条第7項前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。この点について、裁判例などはなく、学説上の議論も見あたりません。消滅時効による債権の消滅は、債権放棄(債務免除)と異なり、法律上の制度である時効により生じるものであることから、債権者から債務者への利益の移転を観念できるものではないと思われます。特に、最終的に債務者側の時効の援用をもって、債権は消滅するのであり、債権者から債務者に「利益の~供与」と評価するのは、文言解釈として難しいでしょう。したがって、債権者と債務者間において、実態としては単なる債権放棄であるにも関わらず、時効制度を利用してそれを仮装したというような特段の事情がない限り、「利益の~供与」とは評価できないと考えられます。160第3章Q&A個人所得・法人税編

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