民事・税務上の「時効」解釈と実務
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Question41共同相続人1名の取得時効の援用の可否とその効果被相続人Xは、生前他人の土地である甲土地を自己の所有物として20年以上占有し、取得時効が成立していましたが、取得時効の援用をすることなく死亡しました。Xの相続人は、子AとBの2名です。この場合、Aは、単独で時効の援用をすることができるのでしょうか。また、それをした場合、時効の援用の効果としては、Aの相続分に応じて他人と共有になるのでしょうか。それとも、甲土地全部がAとBの共有になるのでしょうか。AnswerAは、単独で時効の援用をすることができます。ただし、単独による援用の場合には、甲土地すべてではなく、相続分に応じた甲土地の共有持分をAが取得することになります。◉解説◉(1)共同相続人1名の時効援用の可否被相続人Xの生前に取得時効が完成した(取得時効の要件については18ページ参照)が、時効の援用はされていないということを前提とすると、この時効の援用権(援用権を行使することができる地位)は、相続人の共有となるのか、それとも単独行使が可能なのかという点に疑問があります。この点、判例[11]は、民法上、時効の援用には制限がないこと等を理由に、共同相続人は各自独立して援用権を行使することができるとしています。[11]大判大正8年6月24日民録25輯1095頁218第4章Q&A贈与・相続編

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