民法[相続法制]改正点と実務への影響
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第1節 新設された配偶者短期居住権とは53 居住建物取得者は、第1項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。[1] 法制審議会民法(相続関係)部会第25回会議では、「相続又は遺贈により」との部分については趣旨として死因贈与を含むとの回答がなされています(同議事録PDF版5頁)。(1) 配偶者短期居住権の成立要件 被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に成立します。被相続人の許諾を得ていたことや、被相続人と同居していたことまでは必要とされていません。そのため、例えば、被相続人が単身赴任しており、相続開始の時点で同居していなかったような場合でも配偶者短期居住権は成立します。また、「被相続人の財産に属した建物」に関して成立しますので、建物が賃借物件であるような場合には成立しません。 なお、現行法が法律婚主義を採用していることからすれば、内縁の配偶者は「被相続人の配偶者」には含まれないと考えられます(後述の「配偶者居住権」についても同様)。 もっとも、本条項の創設によっても、内縁の夫婦が同居していた内縁の夫所有の建物について、両者間で使用貸借契約が黙示的に成立していた旨判示した大阪高裁平成22年10月21日判決等を廃除するものではありませんので、一定の事情が認められる場合には内縁の配偶者であっても相続人からの建物明渡請求を拒否できる場合は存在します。(2) 配偶者短期居住権の内容 配偶者は、相続開始の時に居住していた建物を、後述する存続期間、引き続き無償にて使用することができます。また、後述する配偶者居住権とは異なり、配偶者短期居住権によって受けた利益については、配偶者の具

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