図解でわかる新民法〔債権法〕
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はじめに平成27年3月31日、民法改正案、いわゆる「債権法改正案」が通常国会に提出されました。これは、法制審議会民法(債権関係)部会が平成21年11月にスタートしてから、既に6年近くをかけて議論をしてきた成果でしたが、平成27年通常国会から閉会中審査を乗り越え、長い審議を経て、平成29(2017)年にようやく成立の運びとなりました。この改正法は約3年間の周知期間を経て、東京オリンピックの開催される2020年に施行される予定です。それまでは現行民法が活きており、すぐに旧法になるわけではありません。本書では、これからも暫くの間は適用される現行民法を含む現行法を踏まえて、改正民法について解説していきます(なお、本書中の引用条文は原則として改正後の民法の条項を示すものとし、現行民法の条項を引用する場合は「現行民法*条」といった形で表記します。)。さて、債権法とは、民法の中でもビジネスの主要部分に関するものです。ほとんどの取引や契約は、基本的に民法(債権法)の考え方をベースに成り立っています。このため、その基本的理解のないままに事業活動を正しく行っていくことは無理でしょう。今回、このような民法が、1898(明治31)年に公布、施行されて以来、約120年ぶりに本格的に改正されることになったのです。これを契機に、あらためて民法を学び直すには良い機会です。当初の改正審議対象は、かなり膨大なものでした。いわば「大改正」が予定されていたのです。しかし、実際に行われた改正は、かなり絞られたものになりました。改正される部分も、現行民法が判例実務とズレのある部分を調整し、異論のない判例法理を条文化する項目が多数に上ります。その大部分は法文が変わるとはいえ、実質的な改正ではありません。これまでの誤解を改めることが必要なケースもあるでしょうが、消滅時効や保

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