図解でわかる新民法〔債権法〕
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1241 履行請求権等⑴ 履行不能「原始的不能」とは、最初から実現が不可能なことをいいます。現行法では、不可能なことを強制できないので、原始的に不能な契約は法律的には無効だと説明されてきました。民法の条文にそう書かれているわけではありませんが、昔の理論からそう解釈されてきました。しかし、相手と約束しておきながら、実は最初から履行できないからといって、何の責任も負わないというのもおかしな話です。そこで、今回の改正では、原始的不能と後発的不能を区別することをやめます。ただし、契約上の債務の履行が契約締結時点ですでに履行することが不可能であった場合でも、その契約を「有効とする」ということまでは明言していません。結局、今回の改正で、履行の不能に関しては、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない」との定めを設けることにとどまりました(412条の2第1項)。また、契約に基づく債務の履行が契約成立時に不能であったことは、債務不履行によって生じた損害の賠償を請求することも妨げられないという定めも設けられます。ただ、金銭債務についても履行不能がありうるかどうかという論点についも条文化は見送られ、解釈に委ねられます。⑵ 債務不履行による損害賠償とその免責事由現行民法415条は、前段で債務不履行、後段で履行不能(後発的不能)を取り扱っています。しかし、両者をまとめて同様に規律する形としたほうがすっきりします。そこで、今回の改正で、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照 履行請求権等 履行請求権等

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