図解でわかる新民法〔債権法〕
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253おわりに~「わかりやすくする」という目標はどこへ行った?今回の改正では、一部の判例法理が民法の条文に反映されることになりました。これによって、従前よりも民法を読むことで解決を見出すことができる事項も増えます。これまで軽視されてきた民法の条文に立ち戻って考える重要性が高くなる面もあるでしょう。しかし、民法を一般市民にも広くわかりやすいものにするという大きな目的は、ほとんど達成できませんでした。多少なりとも対立のある争点や一部の利害関係者が反対した項目についての条文化もかなり見送られてしまいました。判例法理がほぼ確立している事項についてさえ、その影響を考慮して敢えて条文化を見送ったものが少なくありません。また、今回改正される条項や新設される条項を見ても、極めて読みにくく、難解な条文が目立ち、民法の専門家でさえ、どう改正されたのかを読み取ることが難しい条項がかなり多くあります。特に、改正法においては準用規定が多用されており、いくつもの準用が重なっている条項は、その準用によってどうなるかを読み取るのが極めて難しいことも少なくありません。結局のところ、今回の改正では「なるべく変えない」という考え方が強すぎて、民法のわかりにくさを克服することができなくなってしまいました。むしろ、微妙な改正をいろいろと加えたことが、民法のわかりにくさを増してしまったようにさえ見えます。もともと民法が取り扱う内容自体が難しいのですが、民法の条項から必ずしも明確に読み取れない事項があり、思わぬ誤解や問題が含まれている可能性があります。今後の解釈に委ねられている多くの問題を含め、その帰結がどうなっていくかは、まだ不透明なところがいろいろとありそうです。今回の改正が施行されるまでには、まだしばらくの時間があります。そ

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