家族信託の活用事例
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5第1節 家族信託が注目されているのはなぜかます。しかし、これらにはそれぞれ制約や使い勝手の悪い部分があり、本人や親族、本人を扶養する方が希望する生活支援や財産管理、承継が実現できないことがあります。 信託を利用することで、従来の制度の問題を回避し、希望を叶えることができる場合があり、これが家族信託が注目される理由となっています。信託とは[1]信託の仕組み 信託とは、財産(信託財産)を持っている人(委託者)が、自分が信頼できると思う人(受託者)に財産を託して、自分が定めた目的(信託の目的)に沿ってその財産の管理、処分、その他の行為をさせ、その財産自体や財産から生じた利益を、自分が指定した人(受益者)に帰属させる仕組みのことを言います。 家族信託との関係で重要となる信託の特徴としては、以下のようなものがあります。1 信託財産の独立 信託によって、信託財産は委託者から受託者に移ります。 信託財産は委託者のものではなくなりますので、信託財産に属する財産は、委託者が死亡しても委託者の相続財産になりませんし、後見が開始しても後見人が管理することもありません。委託者が破産しても破産財団に属しません*。詐害信託でない限り、委託者の債権者が差し押さえることもできません。 *委託者の破産、民事再生、会社更生手続で、管財人等から双方未履行の双務契約として信託契約が解除されることが信託の終了事由とされているので(法163八)、委託者の破産等は信託に影響を与え得ることになります。ただし、「双方未履行双務契約の解除権が行使されて信託が終了に至るという事態はきわめて例外的にのみ生じる問題であると考えられる。」(寺本昌広ら「新信託法の解説⑵」『旬刊 金融法務事情1794号』21頁)とされており、その影響は限定的と言えます。3

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