家族信託の活用事例
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8第1章 家族信託の基礎知識きます。 たとえば複数の余剰資産の運用管理を息子に任せたり、複数の株主に属する株式をとりまとめて承継手続を行うといった利用が考えられます(第2章ケース1参照)。5 信託による財産の受益権への転換 信託を設定すると、信託財産は委託者から受託者に移り、受益者は受益債権を取得することになります。委託者は、信託を利用して信託財産を受益債権に転換し、受益者に承継したということができます。 所有権に期限や条件をつけて承継することはできませんが、受益債権は信託行為でその数、内容、期限などを自由に定めることができるので、委託者が財産そのものを受益者に与えるよりも、自由度の高い財産承継をすることができます。 たとえば、Aが自分の財産をBに贈与した場合、その後Bがその財産をどのように使用するのも処分するのもBの自由ですが、Aが財産を信託して受益権をBに取得させれば、Bには財産の利用のみを許して処分を許さないこともできますし、後日、受益者をBからCに変更することもできます。[2]信託と他の制度との違い1 委任・代理 委任と信託は、どちらもこれを利用して本人(委任では委任者、信託では委託者)の財産の管理等を他人(委任では受任者、信託では受託者)が行うことができる制度です。 委任では、財産は本人に帰属し、受任者は財産管理事務を行ったり、本人から代理権を受けて財産の処分を行い、委任事務の効果は本人に帰属するのに対して、信託では財産が受託者に移り、受託者が自ら財産の管理処分等を行い、信託事務の効果は受託者に帰属するという違いがあります。 本人や受任者に破産手続や後見が開始したり、意思能力を失った場合、委任

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