士業者のための実は危険な委任契約・顧問契約
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第2章 民法改正が委任契約・顧問契約に与える影響(総則・債権総論)109な文言が規定されていませんが、当該規定による解除の場合にも、現民法543条と同様に、債務者の帰責性が必要と解されていました。 しかし、改正法では、解除制度について、履行を怠った債務者への制裁ととらえるところから、債権者に対して契約の拘束力からの解放を認める制度へと大きく転換し、解除には債務者の帰責性は不要とする立場を採りました。そのため、改正法541条には、債務者の帰責性に関する要件は設けられていません。債権者は、債務者の履行がなければ、債務者の帰責性の有無にかかわらず、原則、同条に基づき、催告を行うことにより、契約の解除をすることができるようになりました。(2)委任契約・顧問契約に与える影響 現民法541条は、実務上、きわめて適用の多い条文であり、しばしば同条の解釈及び適用が問題になってきました。そして、改正法541条によって、不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして「軽微」であるときには契約の解除が認められないことが明文化されました。そのため、委任契約・顧問契約においても、当該規定の変更に伴い、改正法541条但書に相当する規定を設けることが考えられます。 一方で、どのような場合に不履行が「軽微」といえるのかについては改正法上も明文で規定されていないため、解釈に委ねられることになります。そこで、どのような場合が軽微に当たるかについて、もし列挙が可能であれば、列挙することも考えられますし、列挙が難しい場合であっても、依頼者への説明の際、その点を例示して説明することも考えられます。

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