日本版司法取引と企業対応
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113第4章 企業犯罪と日本版司法取引 たとえばコンサルタントCがいずれ外国公務員贈賄の事実でも摘発される可能性が相当程度あると判断した場合、コンサルタントCとしては、検察官に対して、企業Bの担当者も外国公務員Yに対する贈賄に関与した旨の供述を行い、その見返りとして自らの租税法違反の罪及び外国公務員贈賄罪について、訴追の免除や刑の減軽を得ようとする可能性が出てくる。 同様の状況は、たとえばコンサルタントCの供述をもとに企業Bの担当者が摘発された場合にも生じる。企業Bの担当者は、自らの罪を軽減するため、企業Aの担当者と共謀の上、贈賄をした旨の供述を行うなどして、企業Aの担当者の訴追に協力し、その見返りとして訴追の免除や刑の減軽を得ようとする可能性が出てくる。 このように、日本版司法取引の導入により、捜査対象となった被疑者には、他の犯罪に関する情報提供を検察官に行い、あるいは、共犯者に関する情報提供を検察官に行うことによって訴追の免除や自らの刑の軽減を図るというインセンティブが生じることとなり、ある事件の摘発を契機に他の事件や他の被疑者が芋づる式に摘発されるという事態が増えるのではないかと考えられる。 ここで被疑者・被告人がどのような場合に司法取引を申し出ることとなるかについて若干の説明を加える。 たとえば、前記のケースでいえば、租税犯罪で摘発されたコンサルタントCが、自らが犯した外国公務員贈賄事件について捜査機関が全く気付いておらず、今後も発覚するおそれが少ないと考えた場合には、自ら進んで贈賄の事実を捜査機関に申告することはないと考えられる。贈賄の事実を申告することは、自分自身の犯罪を申告することを意味し、仮に他人である企業Bの担当者の訴追に協力したとして、租税犯罪や外国公務員贈2被疑者・被告人が司法取引を申し出るのはどのような場合か

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