決算書の前期比較術
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はじめに あなたは決算書等の前期比較を、どのように行いますか。 「前期と当期の数字を比較して、著増減している勘定科目等の原因を調べる。」 ほとんどの方は、このように考えるのではないでしょうか。もちろん、正解です。しかし、実際の仕事の場面で、十分かつ効果的な前期比較は行われているでしょうか。決算書等を前期比較しても、異常な取引が行われていることに気付かなかったり、決算書の誤りを見逃したりしたことはありませんか。多くの方に前期比較という分析方法は理解されているにもかかわらず、どういうわけか、十分な分析や効果的な分析がなされていないことがどうも多いようです。 前期比較という分析は、あまりにも当たり前すぎて、私が知る限りその方法を詳しく解説した書籍等はないような気がします。決算書の読み方や経営分析の本では、前期比較の話は取り上げられていますが、数ページ触れられている程度です(拙著「おかしな数字をパッと見抜く会計術」でも、前期比較を取り上げていますが、数ページほどしか説明していません。)。それだけ、説明するほどでもない当たり前の見方である、ともいえます。しかし、この「当たり前の見方」こそ、実は理解されているようで、十分に理解されていない分析方法とはいえないでしょうか。 ある会社で、会計監査上、決算説明を受けることがありました。前期と比較し当期の決算がどのように変化したかについて、重要なポイントを解説していただいたのですが、売上高が減少した背景や営業利益・経常利益が減少した理由については説明がありましたが、売掛金が増加した理由については言及されませんでした。「もしかしたら、あまり触れたくない背景があるのだろうか。」と思いつつも、売掛金の増加理由について質問したところ、「調べていませんでした。ちょっと確認します。」との回答でした。 似たような場面に何度か遭遇するにつれ、「もしかしたら、貸借対照表と損益計算書を別々に前期比較しているのではないか?」と感じるようになりま

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