決算書の前期比較術
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した。他にも利益率が変動するはずの背景があるにもかかわらず、変動していないことについての説明がなかったり、流動資産であるにもかかわらず、1年超も精算されない未収入金や仮払金の存在について確認がなされていなかったり、ということもありました。普通に前期比較が行われていれば、必ず気付くであろうと思われる事項に、気付かれていないケースが意外に多いことを思い知らされたわけです。 こうした問題意識から、「当たり前の見方」がされていると思われている「前期比較の方法」を、今更ながら取り上げてみることも意義があるのではないかと思い、本書が生まれました。その内容は、まさに「当たり前の見方」です。しかし、同じ景色を見ても感じることが人それぞれで違うように、同じ数字を見ても気付く人と気付かない人が出てくるのは、「当たり前の見方」の違いにあるのではないかと考えます。 本書は「当たり前の見方」と思われる前期比較の基本を、できるだけ理解しやすく書きましたが、実際には、対象となる会社の決算の状況に応じて、重点項目を抽出し柔軟に対処して分析する必要があるのは言うまでもありません。私も、仕事上、決算書の前期比較を行う機会は多いですが、公認会計士であることもあり、経営分析の側面よりも虚偽記載有無の側面を重視した内容になっていることは否定しません。分析者によっては、様々な前期比較の方法があることも承知しておりますが、本書を通じて、その基本を学んでいただければ、筆者としてこの上ない喜びです。 最後に、発行にあたり、清文社の藤本優子氏にはさまざまなアドバイス等をいただきました。深く御礼申し上げます。2018年8月㈱ヴェリタス・アカウンティング代表取締役公認会計士 山岡 信一郎

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