新たな収益認識基準 実務対応
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1371 収益認識の金額や時期に影響を与える可能性のある事例客に引き渡した時点で充足される。従って、企業の裁量で購入して、未だ設置されないまま一時的に企業の支配下にあるエレベーターに対する支配権は、顧客に移転されていない。また、エレベーターの調達原価は見積総原価に対して重要性のある金額である。進捗度の測定にその原価を含めると、履行義務の充足程度に比べ過大な収益を認識することになってしまう。 IFRS第15号では、インプット法による進捗度の測定方法には、企業のインプットと財・サービスの顧客への移転との間に直接的な関係がない場合があることを欠点として説明している。そのような場合は進捗度の測定を修正しなければならないとしている(B19項)。企業が購入したエレベーターは第三者から購入していて、企業がエレベーターの設計や製造に深く関与していないからである。 日本基準による場合でも、企業が特定された請負工事のために購入して保管している引当原材料について、進捗度を測定する際に発生原価に含めるか否かがしばしば問題になることがある。引当原材料の価額に重要性がある場合は、原価比例法により測定した進捗度と、実際の工事(作業)進捗度と大きな乖離が生じ、工事進捗度を合理的に反映していないことがある。このような場合は、他の方法(例えば、直接作業時間比率、床面積費などのアウトプット法)を適用するとしている(工事契約に関する会計基準第56項、第57項)。  IFRS第15号では、発生したコストが、履行義務の充足における企業の進捗度に比例しない場合は、発生したコストの範囲内でのみ収益を認識するとしている。そして、これが意味するところは、履行義務に使用される財のコストと同額(マージンゼロ)で収益を認識することかもしれないと説明している(B19項b)。 このような財の購入は、進捗度の測定からは除外されるが、履行義務を遂行するためのコストであるから、少なくとも発生原価は顧客から回

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