実務対応 病院会計
3/38

はじめに国民医療費は増加を続け、今や年間40兆円を超える時代となり、医療費の適正化に向けて、より効率性を重視した病院経営を迫られるようになりました。また、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、住まい・ 医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築など超高齢社会を迎える対応が急務になっています。病院経営者は、このような環境変化に対応し、効率よく収益を確保するために病院を経営することが必要であり、そのためには、経営判断に資する材料を適時に入手・分析し、経営のための意思決定をスピード感を持って行っていく必要があります。その経営のための意思決定を行うには、正確な経営の状態を把握できる情報が必要になりますが、それが会計です。会計は経営を映す鏡であり、かつ将来の航路を示す羅針盤でもあります。適正な病院会計処理を実施することにより、経営判断に資する材料(決算情報)、将来向かうべき方向性の示唆を得られることになるでしょう。我が国の病院会計は、病院の開設主体が自治体、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益法人、医療法人、社会福祉法人など、公的な法人から民間法人まで様々あるという特徴から、各開設主体ごとの会計基準等が制定されている状況です。そこで、病院の開設主体がどのような形態であろうと、決算情報の比較を可能にするために施設会計という位置付けで病院会計準則が昭和40年に制定され、昭和58年及び平成16年の改定を経て現在に至っています。つまり病院会計準則は、病院の各開設主体がそれぞれの会計基準等から「病院」という施設だけを切り出し、他の病院との比較分析を通じて適切な経営判断に資するような会計規範となっているのです。具体的には、平成16年の病院会計準則の改定においては、企業会計とも整合するようにリース会計、税効果会計、退職給付会計といった当時の新しい会計基準や、キャッシュ・フロー計算書という新しい決算情報が導入されています。本書は、病院の管理会計に帰する病院会計準則をベースとして、病院経

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る