ソフトウェア会計実務Q&A
16/22

4第1章 序論 取引や資産の実在性と評価 ソフトウェアが「無形」であることから、取引の実在性を客観的に証明することや、恣意的な資産評価を完全に排除することが困難である、という課題です。 この課題を示す事象として、次の例があげられています。① 架空売上の発覚 架空の取引を迂回させて売上高、利益の水増しを行うという不正取引事例がいくつか発生しました。ソフトウェア取引が書類の上だけで経由しているケースでは、取引の実在性を確かめることが難しいといえます。 ソフトウェア業界における取引慣行の一つに、多段階請負構造があります。 ソフトウェア業界は技術環境が著しく変化し、これまで市場が急激なペースで拡大してきたことから、慢性的な人手不足が生じているといわれています。加えて、需要の増減に応じて柔軟に雇用調整を行うことは困難であるため、常時多数の人員を雇用することは事実上不可能といえます。このような状況下において、ユーザーから要求される納期や契約金額等に応えるには、ベンダー側の要員だけでは十分に対応できないケースも多々あります。 そのためソフトウェア業界においては、必要に応じてソフトウェア制作の一部又は全部を外注先に委託することが広く行われています。それは一次的な段階に留まらず、外注先がさらに外注先に業務を発注するといった、多段階請負構造が業界として慣行化しているといえます。 こうした多段階請負構造の存在は、ソフトウェアの「無形」という特質とともに、売上高、利益の水増しのための不正取引が行われる背景として、ソフトウェア業界における課題であるといわれています。1

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 16

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です