キャッシュレス決済のしくみと会計実務
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54【コラム1】 キャッシュレス決済と家計管理日本ではキャッシュレス決済の普及が遅れたことを第1章第2節で説明しました。普及が遅れたことの消費者側の理由として、「浪費しそうだから」、「お金の感覚が麻痺しそうだから」ということが経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」において挙げられています。しかし、近年普及が進んでいる家計簿アプリを上手に活用することで、実はキャッシュレス決済を利用した方が効果的に節約できる場合もあります。家計簿アプリとは、銀行口座や証券口座、仮想通貨口座、クレジットカードや電子マネー、ポイントなどそれぞれのアカウントを1つのアプリに紐づけることにより、紐づけたサービスの利用履歴や入出金履歴、残高などを一元的に管理できるサービスのことです。日本では、マネーフォワードやZaim、Moneytreeなどがあります。家計簿アプリでは、キャッシュレス決済を利用した場合に、アカウントを紐づけておいた決済事業者から決済データが自動で連携されます。連携されたデータはスマートフォンにプッシュ通知されたり、メールで配信されたりするため、消費者はすぐに利用履歴を確認することができます。連携されたデータをもとに自動で家計簿が作成されます。また、食費や学費、交通費などといったカテゴリーごとに自動で振り分けてくれる機能が備わっているサービスもあります。家計簿アプリには、家計管理に有効なさまざまな機能が備わっています。たとえば、カテゴリーごとに月々の予算を立てられる機能があります。予算を立てる上では、過去に連携されたデータがグラフなどで可視化されているため、過去の収支の実績を参考に予算が立てられるという利便性があります。自分と似たような属性(年齢、収入、家族構成、居住形態など)のユーザーの実績や予算の平均値を示してくれるサービスもあり、平均値を参考にして予算を立てることもできます。家計簿アプリでは、日々データが連携されるため、事前に立てた予算と実績の比較をいつでも容易に行うことができます。現金で支払いを済ませた場合でも、レシートをもとにアプリに手入力したり、レシートを撮影して取り込んだりする機能も家計簿アプリには備わっています。しかし、仕事や家事、趣味に忙しい人がそれを継続することは難しく、挫折してしまう人が少なくないことが想像されます。その点、キャッシュレス決済であれば自動で連携されているため、容易に家計管理を継続することができるといえます。このように、家計簿アプリはキャッシュレス決済と親和性が高く、スマートな

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