中小建設業のための“管理会計”読本
9/16

第Ⅰ章企業会計・会計情報の意義と管理会計の体系1企業会計と会計情報-企業価値創造の経営に向けて 企業会計、特に管理会計の役割は、時代とともに変化してきました。経済の状態や企業経営の在り方と深く関係して変わってきたように思います。少し、振り返ってみることにしましょう。 20世紀経済の大半は、2つの世界大戦を契機としながら、世界的な拡張投資型市場の様相を顕著な特徴としたものでした。拡張のきっかけは、破壊的な戦乱であることもあったし、再編・再生のための一時的な統制や規制を因とするものもあったように思います。しかし、基調としては、各種の市場が不飽和の状態であるという環境を享受して、おおむね右肩上がりの経済実態を目の当たりにすることでした。 1980年代、日本の高度成長が世界の象徴であったのに対して、欧米は諸体制の必死の建て直しにエネルギーを振り向けていました。経済システムを冷徹に分析することで定評のあるM.E.Porterが、価値連鎖(value chain)概念をコアにして経済の建て直し論を展開したのが、その時代でした。 1990年代の象徴は、わが国のバブル崩壊と取り代わるようにして、ITをフル稼動させた高揚期の米国経済です。この時代、競争戦略の形成に成功する企業もしくは業界は、環境の変化に迅速に対応して、価値連鎖の分析とそれを基礎とした経済の再構築に対して的確に反応するものであっ第Ⅰ章 企業会計・会計情報の意義と管理会計の体系◆3

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る