不動産有効利用のための 都市開発の法律実務
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222 第4部 都市活性化推進のための計画と規制ようとすれば,地域の住民全員が協定して,この地域には木造アパートの建築を禁止しようという協定をするということになります。たとえば,つぎのような協定をします。「建物は一戸建とし専用住宅でなければならない。」また,各戸がコンクリート塀などの高い塀をつくりますと,街が暗く冷たくなりますし,見通しも悪くなり防犯上も好ましくないといわれています。しかし,建築基準法上では,このような高いコンクリート塀の設置を制限していません。そこで,地域の住民全員がそのような高いコンクリート塀の設置を制限しようではないかということで合意すれば,たとえば,つぎのような建築協定を結ぶことになります。「道路および隣地境界線は樹木による生垣とし,コンクリート塀,ブロック塀等は設置してはならない。ただし,金網フェンスとする場合はこの限りではない。」2 建築協定と任意の協定との法的性格の差異――新しく土地所有者となった者への効力建築協定は,上述したような趣旨で設けられるもので,東京の住宅地としては一等地といわれる田園調布の住宅街では,住民が建築規則を遵守して,高級な住宅地としての環境を維持してきました(注)。(注) この建築規則は現在大田区の田園調布地区地区計画として指定しています(地区計画は次章参照)。 これは,初期に土地を購入した際結んだ土地譲渡契約書に盛り込まれた建築規則を大田区が追認したという形になっています。 建築協定の例としては開発当時高級住宅地にしようというデベロッパーの意気込みがあった千葉市緑区あすみが丘ワンハンドレッドヒルズの建築協定を掲げておきました。なお,この地区計画の内容は巻末《参考資料-❸》を参照してください。田園調布のように地区計画として定められればいいですが,法令に根拠をおかない一般の協定ですと,それは住民間の契約にすぎませんので,協定に調印した土地所有者を拘束することはできますが,その土地が第三者に売却された場合,新しい土地所有者を拘束することはできません。当初の協定を締結する

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