激変する既存住宅ビジネスと税制活用
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1 2033年、空き家率は30%を超える?3とはいえ、全国平均で「隣が空き家」という状態は、治安の面から見ても決して好ましい状況とは言えないだろう。米国の犯罪学者ジョージ・ケリングは、「Broken Windows Theory(ブロークン・ウィンドウズ理論)」を考案している。軽微な犯罪を徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を抑止できるとする環境犯罪学上の理論で、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓も全て壊される(治安が悪化していく)」との考え方から、ブロークン・ウィンドウズ理論と名付けられている。日本における空き家率と犯罪発生率の関係性は定かではないけれども、空き家が増えていくと住宅地が荒廃していく可能性は否めない。なんとかして回避すべきではあるものの、以降でも述べるように即効性のある抜本的な解決策は見当たらず、多方面から様々な対策を講じるしかないため時間を要する。しかしながら、残された時間には限りもあるので、いち早く取り組む必要がある。例えるならば、巨大タンカーが迫りくる氷山を避けるのと似ていて、すぐに方向転換できない日本の空き家問題というタンカーを、生活者はもちろん行政や民間企業などが協力して、舵を切っていかなければならないのだ。(2)日本の空き家率は未だ深刻な水準ではない総務省「平成25年住宅・土地統計調査」によれば、2013年の空き家数は820万戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.5%と、いずれも過去最高となった。調査結果が公表された翌日の日本経済新聞では一面トップで報じられる等、人口・世帯数減少時代において空き家率が高まっている現状に対して、警鐘を鳴らす報道も多かった(図表2)。しかしながら筆者は、過去最高水準ではあるものの、13.5%という現状の空き家率は、まだ深刻な水準ではないと考えている。例えば、米国の空き家率と比較してみると、中長期的に見ても空き家率

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