激変する既存住宅ビジネスと税制活用
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はじめに日本は今、人口は減少局面に入っているものの世帯数は増加しているという、いささか特殊な状態にある。国立社会保障・人口問題研究所によると、総世帯数は2019年にピークアウトすると推計されており、ほとんどの先進国が経験したことのない人口・世帯数減少時代が、いよいよ目前に迫ってきた。人口・世帯数減少は、国内の様々な市場に影響を及ぼすと見込まれるが、特にその影響が大きいと考えられるのが住宅市場である。国内住宅市場はこれまで、気候・風土や文化の影響を強く受け、新設住宅に依存した構造をとってきた。本格的に人口・世帯数が減少していく中で、新設住宅着工戸数は中長期的に減少していくことが避けられない。新設住宅に依存してきた住宅業界は、抜本的な事業構造転換が必要となるであろう。新設住宅着工戸数が減少しても、それを上回るペースで世帯数が減少すると懸念されるのが、空き家数および空き家率の増大である。総務省「平成25年住宅・土地統計調査」によれば、2013年の空き家数は820万戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.5%と、いずれも過去最高となった。このままでは、2033年の空き家数は約2,000万戸を超え、空き家率は30%を超えると見込まれる。空き家率が20%を超えてくると、住環境悪化や行政コスト増大などの問題が生じる可能性がある。人口減少対策はもちろん、活用価値が低下した住宅の除却、既存住宅流通市場の整備、複数戸の住宅を1戸の住宅にリフォームやリノベーションする減築、コンパクトシティの実現などを積極的に進めていく必要がある。以上のような背景に基づき本書は、建設・不動産・住宅関連業界のリサーチ・コンサルティングを手掛けるコンサルタントと、不動産関連税制

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