激変する既存住宅ビジネスと税制活用
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1 除却・減築の促進195除却・減築の促進1(1)除却には費用負担が、減築には投資負担が伴う空き家数の増加や空き家率の増加に直接的な効果を及ぼす打ち手は、住宅の除却である。今後は、耐震性能や省エネ性能などをはじめとした基本性能に問題があり、人口動態から見ても市場性が低い住宅は、積極的に除却しなければならない時代になる。しかしながら、住宅を除却するためには、解体費など、所有者に一定の費用負担が発生する。さらには、住宅を除却した後の土地に対する固定資産税には、特例措置が適用されなくなるため、課税額も増える。これまでの日本では、不動産資産を保有することのメリットばかりが注目されてきたけれど、空き家率が一定水準を超えてくると、不動産資産を保有することによる責任を認識しなければならなくなる。除却に必要なコストや、その後の税負担はまさに、不動産資産を保有することの責任と言える。しかしながら、何のメリットもないにも関わらず、生活者が費用負担することは簡単ではない。一方、延床面積を縮小したり、複数戸の住宅を1戸の住宅にリノベーションしたりといった減築も、空き家数の増加や空き家率の増加に歯止めを掛けるためには、有効な手段である。ただし、減築の場合、単純な除却に比べ、減築後の不動産資産が付加価値を生むため、費用負担というよりは、投資負担という概念で捉えることができる。よって当面の間は、投資に見合う収益が見込まれるかどうか、市場原理の下での拡大に期待していくしかない。または、先述したように老朽化した公営住宅などにおいて、積極的な実証実験が望まれる。したがって少なくとも、除却を促進するためには、何らかのインセンティブを付与する必要があるのではないだろうか。日本では住宅を新築す

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