非居住者・外国法人の源泉徴収の実務Q&A
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はしがき ここ10年間で、国際課税の分野、殊に租税条約に関して刮目すべき変化がいくつか起きています。そのひとつは、租税条約の果たす役割の変化です。 租税条約は単に国際的な二重課税の防止のみならず、国際的な投資や人的交流を租税面から促進する役割をより明確に担うようになりました。そのことは、日米新条約や、その後に続く日英・日仏などの新条約の改正内容に如実に反映されています。 租税条約におけるもうひとつの変化は、情報交換に関する締結の拡充です。タックス・ヘイブンの代名詞のように称されているバミューダやバハマ、ケイマン諸島とも、それに関する協定を締結し、発効しています。 まさにグローバル経済の大波は、国家主権のシンボルともいえる課税権についてもガラパゴス化を許さない時代の到来さえ予感させますが、各条約の内容をよく吟味する必要性は時代を超えて変わらないテーマです。 加えて、最近における超円高の定着や、新興国の経済的台頭、さらに各国における競争的な法人税率の引下げなど外資導入政策の深化等に呼応した企業の海外進出の加速度的な昂進は、あまねく規模を問わず及んでいて、それに伴い、日本企業は否応なく国際課税への適切な対応を求められています。 また、日本の対外的な特許収支(特許や著作権の活用収支)の黒字額が2011年は過去最大となり、米国に次いで世界2位との報道がありました。この黒字は2003年以降は一貫して続いているようですが、ただし、特許等の支払額そのものは、過去10年以上にわたり1兆円を大きく超えるベースが続いているとのことです。 このように、国際的な政治・行政・経済面においてさまざまな潮流の変遷がありますが、その中にあっても、クロスボーダー取引における課税処理の的確性に対する要請は、現状においていささかも色褪せておらず、むしろ、その重要性は高まっているものと確信するものです。

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