グレーゾーンから考える相続・贈与税の土地適正評価の実務
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はしがき 相続税の実務においては、財産の評価が最も重要なポイントである。特に土地は、相続財産に占める割合が高く、土地の評価をどのように行うかによって相続税額が大幅に異なることからその影響は大きい。 土地の評価は、あらかじめ定められた国税庁評価基準(財産評価基本通達。以下、評価通達)により行われるのが一般的であるが、土地は極めて個別性が強いことから、すべての個別事情を想定して評価基準を定めることは難しい。したがって、ある程度包括的な規定ぶりにならざるを得ない。 例えば、評価通達の中には、「著しく不適当(評価通達6)」「著しく不合理(同7-2)」「実際の面積(同8)」「相当と認める金額(同20-2)」「著しく広大(同24-4)」「通常必要と認められる(同40)」など、数多くの包括的表現がある。広大地補正における広大地であれば、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」をいうが、何が標準的なのか、著しく地積が広大とはどの程度をいうのか具体的に示されていない。 これが、いわゆるグレーゾーンである。実務においては、このようなグレーゾーンが多くあることから判断に迷う場面が多くある。 本来は、税務の世界では、誰が評価しても土地の評価額が同じにならなければならない。評価する者によって評価額が異なるのでは、租税の原則である納税者間の公平が保たれないからである。またそのために評価基準が定められているのである。 しかし、上記のようなグレーゾーンがあることにより、評価する者によって評価額(ひいては税額)が異なる、10人が評価すれば10通りの評価額があるという事態が生じているのが現状である。 このようなグレーゾーンは、時価を超えるのではなくまた時価未満でもなく、まさに適正な評価を行わなければならないのであるが、その際に最も有益な資料が過去の裁判例・裁決例である。 まず、裁判例等の情報は納税者への適正な申告の提供に欠かせないものとなっている。評価手法において判断の分かれる場面で、裁判例等で認められている評価の(減額)手法を知らずに過大な評価を行うことは評価過誤となる(例えば、市街地山林の評価において、傾斜度30度超の山林は宅地への転用が見込めないことから純山林に準じて評価するという事例があるにもかかわらず、これを検討しないで宅地に準じて評価すること)。

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