中小企業のための事業承継ハンドブック
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第3章 事業承継に係る会社法の定め1693.相続人等に対する自社株式の売渡請求制度のデメリットと対策⑴ 相続人等に対する自社株式の売渡請求制度のデメリット 相続人等に対する自社株式の売渡請求制度は、相続等により、後継者とは敵対的な者に株式が承継されてしまうことを防止し、後継者に経営権を集中させることを目的として用いることができます。しかし、当該制度は相続等により株式を承継した者全員に対して適用することができるため、本来の後継者が相続により現経営者が保有する株式を相続した場合に、後継者とは敵対的な少数派株主が、理論上これを用いることもできてしまいます。売渡請求を決定する株主総会においては、売渡請求対象者自身は議決権を持たないため、仮に後継者が売渡請求対象者となった場合には、後継者以外の株主が議決権行使を行って売渡請求の決定を行います(会175②)。この結果、後継者とは敵対的な少数派株主により売渡請求が決定され、後継者は現経営者が保有する株式を承継できなくなる可能性が生じてしまいます。《問題点》現経営者から後継者に対して相続が起こった場合、敵対的な少数派株主が売渡請求の決定決議を行う可能性がある。    ⇒当該決議において、後継者には議決権が与えられないため、決議を拒否することができない。  ⇒以上より、敵対的な少数派株主の主導のもと、後継者に対して株式の売渡請求がなされてしまう可能性があり、その結果、後継者に対する議決権の集中が図ることができなくなる。現経営者後継者売渡請求の決定決議売渡請求対象者となる後継者には議決権はない。現経営陣相続発生売渡を請求敵対的少数派株主

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