小規模社会福祉法人の法人運営と財務管理
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7会計基準と損益概念介護保険導入時、社会福祉法人の会計の中に損益概念が初めて取り入れられました。これは前述のように、公的扶助であった社会福祉の分野に介護保険という社会保険制度が導入されたことがきっかけで、措置から契約、運営から経営という大きな変革があったためです。それまで社会福祉法人は措置制度の時代で、公的扶助を行う措置権者(地方公共団体)に対して、収支計算の結果を報告することが主たる会計の目的でした。これが社会保険として個別契約となったことで利害関係者が増え、経営の継続性を維持するため等、正確な損益計算が不可欠になったのです。ここに収支計算と損益計算の大きな違いとは、減価償却に代表される期間計算(期間損益を計算をするといったほうが正確)をする必要性がなかった時代と、必要になった時代の会計のあり方の違いだといってよいでしょう。1年間の経営成績の報告書がいわゆるP/L(prot and loss statement)すなわち損益計算書ですが、会計基準では「事業活動計算書」となっています。その経営成績の結果である当期利益が会計基準では「当期活動増減差額」です。企業会計と呼称ないし表記を変えているのは、社会福祉法人の会計報告は、そもそも儲けるために事業を行っているのではないという前提の表れだと言われています。8会計理論からみた会計基準減価償却を例に考えてみます。一般的な理解として、減価償却はものの価値が下がっていくものとして説明されます。例えば、この車は十分償却し終えたという表現などがその例です。また、少し経理をかじったことがある人にしてみれば、いやいや、ある一定価額以上のものを買ったときに、全額は落とせないので何年かにわたって経費に振り替えること。一度に落とせるのは30万円までだというようなとらえ方をされることがあります。必ずしも間違っているわけではありませんが、この減価償却という実にわかりにくい概念は、先の利益概念でもある期間損益計算の結果です。それは、法人は継続するという考え方が基礎になければ出てこない概念です。会計理論的に言うと、下位概念である会計公準、上位概念である具体的な会計処理である「会計手続き」を通して理解すると、減価償却の意味がよく理解でます。減価償却を会計理論的にとらえてみます。① 会計公準(会計の基準や処理が成立するための前提や仮定となるもので、解散・清算をしないで法人は継続するということ)211 会計基準

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