小規模社会福祉法人の法人運営と財務管理
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2 制度改革の背景と社会福祉法改正の概要1改革の背景社会福祉法人制度は、設立については認可主義を採用し、その経営についても行政機関(所轄庁)の指導監督を受けていますが、近年の社会情勢の変化にともない以下のような問題が指摘されていました。① 社会福祉法人制度と多様化・複雑化する福祉ニーズヘの対応戦前の社会福祉の黎明期における民間社会福祉事業は、篤志家等による慈善事業として実施されていました。そして戦後の混乱期において社会的弱者である身体障害者、戦争孤児、失業者等の生活困難者の激増という困難に直面し、これらの人々への対応が急務となっていましたが、行政の資源が不十分であったことから民間資源の活用を求めるなかで設立された法人が社会福祉法人です。その後、社会福祉法人は、公益性の高い社会福福祉事業を行うことを目的とする非営利法人として、長年、福祉サービスの供給確保の中心的な役割を果たしてきました。しかしながらこの間、福祉サービスの利用の仕組みが行政による措置から利用者との契約に移行し、また、株式会社など多様な経営主体による福祉サービスヘの参入が進むなど、福祉サービスの供給体制における社会福祉法人の位置付けが変化してきました。このような社会福祉法人を取り巻く状況の変化によって、その役割は社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的な役割を果たすだけではなく、他の事業主体では対応できないような様々な社会福祉ニーズに対応すること、制度に定められた社会福祉事業にとどまらない地域貢献活動の実施が求められるようになってきています。ところが、これらの取組みが一部の社会福祉法人にとどまっていること、取組みを実施している法人でも利用者や地域住民から十分な評価が得られていないことなどによって、社会福祉法人の役割や存在意義が広く認識されない状況になっているのが現状です。② 公益法人制度改革の影響旧民法第34条に基づく公益法人については、公益性の判断基準が不明確なため営利法人類似の法人や共益的な法人が主務大臣の認可によつて多数設立された結果、税制上の優遇措置や行政の委託、補助金、天下りの受皿となっている等さまざまな批判、指摘を受けたことか72 制度改革の背景と社会福祉法改正の概要

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