非公開会社における少数株主対策の実務
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序章 少数株主が事業の継続・承継に与える実務上の影響4 少数株主が事業の継続や承継に悪影響を及ぼすことがあるといっても、現場において、どのような場合に問題が生じるのかがわからなければ、具体的なイメージをもつことができないと思います。ここでは、少数株主やその対策などが実務上問題となる主な場面についてみていきます。1.昨今の少数株主を支援する弁護士と株式買取業者の存在 少数株主といっても、会社法上は、様々な権利を有していることは、前述のとおりです。この「様々な権利」について、詳しくは「第1章」で解説しますが、最近では、この権利を駆使して、少数株主の権利実現をサポートする弁護士も多くなってきています。例えば、少数株主権である「会計帳簿の閲覧・謄写請求権」(22ページ参照)などを駆使し、経営株主の経営実態を把握し、会社の不透明な支出などについて継続的に監視されたり、取締役への損害賠償請求をしたりというようなことです。いわゆる決算書類のみでなく、その過程である個々の支出などがわかる会計帳簿まで把握し、指摘を繰り返すことで、最終的に耐えきれなくなった経営株主や会社に高額で株式を買い取らせるというような狙いがあるケースも多く見受けられます。 一方で、非公開会社の株式を買い取ることを専門とする買取業者など(ブローカー等を含む)も存在します。この点については、株式に譲渡制限がついている以上、会社が承認しなければ、何も問題がないとも思われがちです。 詳しくは「第2章」で解説しますが、不承認とする場合には、最終的に会社や経営株主が株式を買い取らなければなりません。株式を買取るか、今後、買取業者等に少数株主権を行使され経営に口出しされるかのいずれかは避けられません。特に事業承継などを考えている会社における株価は高額となることが多い一方で、買い取らなければ、後継者にそのような少数株主を残してしまい柔軟な事業の承継が困難となってしまいます。実務上問題となる主な場面2

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