非公開会社における少数株主対策の実務
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序章 少数株主が事業の継続・承継に与える実務上の影響6を行う場合、会社の支配権を後継者に「承継」していくこととなります。承継の問題と両輪で必要となるのが、少数株主の株式を集約させ、後継者の支配権(持株比率や議決権比率)を向上させることです。本書は、事業承継という意味では、この集約という面に着目した書籍となります。承継についても書きたいことがたくさんありますが、本書ではあくまでも集約という側面について解説しています。 経営株主Aは、会社を創業して、事業を大きく成長させてきた人物が多いです。語弊がありますが、極論、株式を持っていなくても周りからの信頼は、絶大であることが多いでしょう。 一方で、他の者(後継者)に経営を承継した場合、これまでのように少数株主との関係を維持できるかというとそういうケースばかりではありませんし、事業承継後は会社内部の問題やこれまで問題とならなかった少数株主とのトラブル等も含めていろいろな問題が顕在化します。後継者という立場からすると先代経営者以上に、強い支配権を持つことがこのような問題を乗り越えるために必要です。最低限の目安としては、株主総会の特別決議を確実に行うことができる3分の2以上の議決権を保有していることが必要と考えています。議決権の集約の各種手法は「第5章」や「第6章」で解説しますが、3分の2の議決権は、最悪の場合に少数株主を締め出すことができる議決権割合ということにもなります。 また、信頼関係が維持できなければ、前述の弁護士や買取業者なども介入しやすくなります。これは、少数株主に相続が発生し、少数株主に変動があった場合も同様です(第4章参照)。 事業承継の特に初期の頃は、後継者が法的に弱い立場に立たされることは、防がなければなりませんし、将来のリスクを低減するため、できる限り株式を集約していかなければなりません。また、その他、名義株主等の諸問題も、事情を知る先代経営者や少数株主が健全なうちに解決しておくことが重要です(第7章246ページ以降参照)。(2) 事業承継型の第三者M&Aと少数株主の問題 後継者候補がいないことも多い中小企業の事業承継の方法として、昨今注目を集めている手法に、事業承継型の第三者に対するM&Aがあります。一部の

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