非公開会社における少数株主対策の実務
18/28

2 実務上問題となる主な場面7調査では、廃業を予定している会社のうち、後継者の問題が合計で約3割とされています2。また、近年の事業承継における親族内承継の割合が35%まで減少し、親族外承継の割合が65%以上に達しているともされています3。この親族外承継の65%のうち半分以上は役員・従業員への承継を含みますが、それでも、事業承継型の第三者に対するM&Aも増加してきていることが窺えます。 すべての事業承継に共通することですが、適切な事業承継ができずに、優良な中小企業の雇用、技術、ノウハウなどが失われてしまうことの損失は計り知れないものがあり、後継者不在という課題を解決するために事業承継型の第三者に対するM&Aは今後も増加していくものと思われます。筆者の経験でも、ここ数年で事業承継型の第三者に対するM&Aに関して、売手・買手双方ともの依頼が増加しています。 今後も増加していくであろうと予測される事業承継型の第三者M&Aを実行するに際しても、少数株主に関連して問題が生じます。① 株式の100%の売却が必要 事業承継型の第三者M&Aにおいては、当然のことながら、買手は、特殊な事情がない限りは、売手の100%の株式の取得を希望します。したがって、事業承継型のM&Aにおいて、少数株主を整理・集約する(またはできる)ことは、売却の条件において不可欠ともいってよい重要な要素です。 株式譲渡によるM&Aの場合には、少数株主を含むすべての株主と合意をしてM&Aを実行することもありますが、買手の希望や少数株主の数、反対する少数株主の存在などによっては、事前に株式を支配株主に集約させておくことが求められるケースも多いです。 本書で、第1章以降で解説するところですが、少数株主には多くの権利がある上、買手関与の下、強制的に少数株主の株式を取得する手法などを利用した場合や買手側が売手の資産を担保としてLBOローンなどにより買取資金を調達し2) 平成28年12月付けの中小企業庁「事業承継ガイドライン」8頁 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf3) 同ガイドライン11頁

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る