非公開会社における少数株主対策の実務
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iはじめに 中小企業における「少数株主」というと、議決権割合も低く、何もできない存在と思われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、会社法の下では、この「少数株主」は様々な権利をもっています。本書の中でも詳しく解説しますが、最近では、この権利を活用し、少数株主を支援する弁護士や譲渡制限をされている株式を購入する買取業者などが存在し、会社経営に重大な影響を及ぼす事例が増加しています。 また、経営者の高齢化や事業承継税制の拡充などから注目を集めている事業承継対策のうち、親族内承継や従業員承継のケースでは、後継者に会社の支配権である株式を集約していくことが重要となります。先代経営者の際には特に問題とならなかった少数株主についても、経営者が変われば、従来のような関係性が継続できるとは限りませんし、前述の弁護士や買取業者なども介入しやすくなります。これは、少数株主に相続が発生し、少数株主に変動があった場合も同様です。 さらに、昨今増加している事業承継型の第三者に対するM&Aにおいて、少数株主を整理する(またはできる)ことは、売却の条件において不可欠ともいってよい重要な要素となります。また、特に中小企業においては、過去の少数株主からの株式の集約が会社法の手続や規制に違反し、会社の想定している株主が実は株主でないという問題が明らかとなり、取引自体のブレイクやリスク含みのものとして対価が著しく毀損されるという事態も発生します。 本書は、筆者が税理士の先生方と多くの少数株主・事業承継対策を連携して行ってきたこともあり、会社の経営者の方をとても近いところで支えていらっしゃる税理士の先生(またはFPの方など)を対象として執筆しております。 会社法実務に詳しい顧問弁護士等がいる中小企業は残念ながら多くなく、経営者の方の信頼を得て、いろいろなご相談や情報をお聞きになっているのは、税理士やFPの方が圧倒的に多いと思います。実際の手続きや対策の実行などについては、各専門家の紹介などをすることとなると思いますが、その前提として、税理士の先生やFPの方が、会社法の制度、リアルなリスクや実務の現実などをご存知であることは、中小企業にとって、非常に価値の高いことだと感じます。 また、本書では、筆者が税務分野も専門としていることから、税理士の先生からよくご相談いただく少数株主対策に関する「低額譲渡の課税関係(みなし贈与等)」、「自己株

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