非公開会社における少数株主対策の実務
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第 2 章 少数株主の株式譲渡に対する事前対策と実務対応62 株式を移転させる最も基本的な方法が、ご存知のとおり、株式の譲渡になります。なお、この譲渡には個人間の贈与を含みます(「コラム1「譲渡」に贈与は含まれない?~所得税法、相続税法からくる勘違い~」(85ページ参照))。 ほとんどの中小企業では、株式の譲渡には、会社の譲渡承認が必要であるとされています。いわゆる譲渡制限株式であり、すべての株式にこの譲渡制限がある会社が本書が対象とする非公開会社です。 中小企業の経営株主は、自社の株式を譲渡するには会社の承認が必要であることは理解されている一方で、少数株主が株式譲渡をするにしても、会社の承認が必要であるため、承認機関で否決をすれば問題ないと思われている方も多くいらっしゃいます。仮に、否決さえすれば問題がないのであれば、4ページで解説した昨今の株式買取業者等の存在も大きな問題とはなりません。 しかし、この譲渡制限株式の制度は、大原則である株式譲渡の自由(会社法127条)を、閉鎖的会社において好ましくない者が株主になることを防ぐために、その限度で、例外的に修正しているものに過ぎません。 確かに、誰が株主になるかという点についての防御は可能ですが、既存株主が株式譲渡を通じて、株式をキャッシュ化(投下資本の回収)することまで、防ぐことはできない制度です。 簡単にいえば、仮に株式譲渡を認めない場合には、会社または会社が指定する者(多くの場合、経営株主)が、株式を買取る必要があります。その金額によっては、会社経営が窮地に追い込まれる事例も少なからず存在しています。また、この制度は、一般に知られているよりも実は複雑な制度であり、初期対応を誤ると簡単に買取業者等が株主となってしまいます。 本章では、譲渡制限株式制度の内容とそれに対する具体的な対応や事前対策などについて詳しく解説します。本章の概要1

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