非公開会社における少数株主対策の実務
23/28

92第 2 章 少数株主の株式譲渡に対する事前対策と実務対応 非公開会社の株式を譲渡するケースにおいて、民事上は合意ができれば、その金額がいくらであれ問題はありません。あくまでも民事の問題は当事者間の問題だからです。一方で、合意するに際しては、国と納税者の関係である税務についても当然考えなければなりません。ここでは、事業承継対策や少数株主対策において、実務上特に判断が必要となるいわゆる「低額譲渡」と税務上の時価の問題について考えていきたいと思います。税務上の時価の算定について、識者による見解の相違、整理方法の違い、そもそも議論が進んでいない部分などもあります。以下は、筆者の経験や裁判例等の分析から実務上の考え方の1つの整理方法であり、私見を含むことを申し添えます。 なお、当コラムでは、合意による自己株式の取得については扱っていません。合意による自己株式の低額取得については、「コラム6自己株式(金庫株)の低額による取得と課税関係(みなし贈与課税等)」(131ページ)をご参照ください。低額譲渡における適用税法 株式譲渡における課税関係は、当事者が個人か法人かにより適用税法が異なってきます。まず、いわゆる「低額譲渡」における税法の適用関係を見ていきたいと思います。(1)①「譲渡人:個人 譲受人:個人」の低額譲渡 譲渡人については、実際に合意した金額を収入金額として譲渡所得の計算をすれば足りる一方で、譲受人には合意した金額が時価と比して「著しく低い価額」にあたる場合には、時価との差額について、みなし贈与として贈与税が問題となります(相続税法7条)。1.非公開株式の「税務上の時価」と低額譲渡の課税関係(みなし贈与・譲渡等)COLUMN4

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る