日本の税制
2/28

iまえがきまえがき 私たちが今,日本という国に居住し,当たり前のように安心して生活できるのは,国民が憲法によって,国家に対して,教育,勤労,納税という三つの義務を負うものの,最低限度の生活を営む,教育を受ける,参政などの権利や,表現,集団・結社,居住・移転,営業など,多くの自由が保障されているからである。 なかでも納税義務については,憲法第30条で,「国民は,法律の定めるところにより,納税の義務を負う」と定めている。文章をそのまま読めば,「国民は税金を納めなければならない」というごく単純なものであるが,二つの考え方が含まれている。その一つは「この納税の義務を国や政府の立場から見ると,税務署などは国民に税金を納めさせる行政をしなければならない」。もう一つは「法律以外の根拠に基づいて役人が国民から税金を徴収してはならない」ということで,法律に基づかない勝手な税の取り立てから,逃れられる権利である。憲法第84条の「あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする」に通ずる考え方である。 税について,広辞苑は,「国費・公費支弁のため,国家・地方公共団体の権力によって,国民から強制的に徴収する金銭など」とし,最高裁は,昭和63年のサラリーマン訴訟おいて,「租税は,国家が,その課税権に基づき,特別の給付に対する反対給付としてでなく,その経費に充てるための資金を調達する目的をもって,一定の要件に該当するすべての者に課する金銭給付であるが,およそ民主主義国家にあっては,国家の維持及び活動に必要な経費は主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであり,我が国の憲法も,かかる見地の下に,国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うことを定めており(第30条),新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によるこ

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る