日本の税制
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iiiまえがきかというと,それによって,負担しなければならない人々,つまり,我々の子孫には,今,選挙権がないからだ」という考えを述べている。選挙を基本におく民主政治に対する痛烈な警句であり,将来世代へのつけ回しは国家の崩壊につながることを教えている。 政府が増税するには,新しく税を制定するか,税率を変更することになる。その際は「法律による」と憲法は規定しており,その法律は国民が選挙によって選んだ国民の代表,つまり,国会議員が決めるというシステムである。そして,そのような政治家を国民自らが選んでいるのであるから,結果的には,国民が決めるということになる。このような議会による税の決定は,明治憲法以来のことで,2,000年を超える我が国の歴史の中では,たかだか130年余りのことである。「国民が選挙によって選んだ国民の代表」を「選良」というが,これは「優れた人」を選ぶという意味である。現在は,国家の方針を議会が決定する時代であり,優れた国会議員を選ぶことが国民自らの生活を豊かにすることにつながるのである。 ところで,その肖像が1万円札にもなった,福沢諭吉の「学問のすすめ」に,「国民は国の本家本元であるから,国を守るための費用を払うのは,義務である。だから,出費の時は気持ちよく払え。国を守るためには,役人の給料もいる陸海軍の軍事費もいる,裁判所の費用もいるし,地方官の費用もかかる。それらを合計すれば大金のように思えるが,一人当たりで割れば何ほどのことでもない。日本の歳入額を全国の人口で割れば,一人当たり1円か2円であろう。年間僅か1円か2円を支払って,政府の保護を受けて,泥棒や強盗の心配もなく,一人で旅行しても山賊に遭う恐れもない。安穏とこの世を渡っていけるのは,非常に便利なことではないか。およそこの世の中に,何がうまい商売かといって,税金を払って政府の保護を買うほど安いものはない。酒や女に身を持ち崩す者もいるが,これらの費用と税金の額を比べれば,もとより同日の談ではない。安い買い物であるのだから,税金はあれこれ考えずに気持ちよく払うべし」という文章がある。つまり,「税金は気持ちよく払え」という

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