日本の税制
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ivこと。まさしく至言である。 税は「納めるもの」であること,我々日本人は日本国という一つの乗り物に乗り合わせていることを忘れてはいけないと思う。人は,共同体や社会に所属しなければ生きて行けないし,生きて行くには,そこでの慣習やルール(規範)に従うことが求められる。企業においても,その発展・存続のためには守るべきルールを新入社員に教育しなければ,企業は衰退する。国家も同じで納税する人がいなくなれば,立ち行かなくなる。 現在の,日本人の税についての意識や税制度は,一朝一夕にできたわけではない。我々が使っている言葉や,生活する上での衣・食・住と同様に,昔々から長年にわたって築きあげられたものである。特に,社会の制度や活動はいずれも歴史的な存在で,過去と切り離して考えることができないもの,未来へと繋がって行くものである。 我が国の税制改正は,毎年,政府(財務省)が各方面からの税制改正要望をとりまとめて,税制大綱を発表し,税制改正法案が国会審議・採決を経て改正税法が公布・施行される。しかし,毎年の大綱を読んでも,各税法の解説はあるが,この国をどのような国にする,どのような国造りをしなければならないのか,という視点がやや欠落している。社会保障だけで国造りはできないし,日本の歴史や文化を踏まえて,どのような税制が望ましいのかの議論がない。国民受けするだけの議論では,いずれ国は潰れる。国民生活の本当の安定は,一人ひとりが自己責任としてこの問題を考えること,国とは,国民とは,この国の形とは,これらの基本的なことを正しく教育することである。多様性も必要であるが,多様性を尊重するだけでは,物事の真の解決はできない。一つのことを選択しなければならない局面もあり,基本があっての多様性である。そして,何よりも危惧するのは,近年,この国をしっかりと見つめられる人材が少なくなっていることである。 今,世界の政治と経済に,グローバル化とデジタル化の大波が押し寄せ,過去の20世紀型の国家像が大きく揺さぶられているだけでなく,新型コロナウイルス感染症が人類最大の危機として立ち塞がっており,財政を大きく圧迫して

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